月面三点倒立

後方2回宙返り1回ひねり三点倒立

今だからこそ「キーボードと社会」みたいなのを誰か真面目に発表してほしい

はじめに

この記事は キーボード #2 Advent Calendar 2019 の 12 日目の記事です。

adventar.org

今回はポエムというか、とりとめのないグダグダした内容になるのでお役立ち情報をお求めの方は他の記事を読むことをオススメする。
特に最近キーボードを始めた方はこの機会に 2017 年版や、2018 年版のアドカレも見に行くと面白いかもしれない。

実際問題、この期に及んでキーボードが何たるかをまだよく分かっていない気がするのだ。

自作キーボード振り返り

自作キーボードを始めてから2年近くになるのだが(開始は 2018 年 5 月)、
その間に遊舎工房さんリアル店舗を開店して、気づけばもうすぐ一年になりそうなので
ここらで軽く振り返ってみようと思う。

  • 2018 年 春頃
    • 何かの拍子に Twitter で ErgoDox を見た
    • レツプリや Helix の GB があったことを終わってから知った
    • 来る日も来る日も Twitter でレツプリや Helix を眺める日々...
    • 我慢ならん!と Barocco を購入。そして直後に Ergo42 の Booth 販売を知る
    • 今買わないと今後手に入らない気がしたので Ergo42 キットを 3 つ買い
    • Iris、Dilly、そして Corne と続々入手しては作る
    • キーキャップは海外の通販がメイン
    • 目についたもの(特に国内設計のキット)は全て買う!位の意気込みがあった

だったのだが、
キーボードのコミュニティを近くで見ていたところ

  • 2019 年末
    • キーキャップはガチャでも入手可能になった
    • Ergo42 は市販してる
    • 自作キットもよりどりみどり
    • ケーブル作る人も多い
    • Diamond Starstones スイッチというのがあるらしい(天キー3行きたかった...)
    • 界隈と繋がりも深い VTuber も活動中で、日曜には Youtube で「ほぼ週刊キーボードニュース」やってる
    • 知らないキーボードの画像もよく流れてくるようになった
    • 飲み会にキーボードを持参する光景は日常
    • 基板設計者多数、空中配線あり、3Dプリント、描き下ろしのシルク、浴衣、射出成形、鋳造、焼き物、染め物、ガラス、レジン、テストマン、ご飯、自作ステム、サウンド連動、光る、音が鳴る、1キー、140%、フリマ、組み立て会、インターン、カフェ、ビール、サバゲー、スイーツ、DJ、忘年会、ネジ、ネジカウンタ、たのししま、etc...

とまあ、思い出した事柄を書いていたら途中よく分からなくなったが、とにかく 2 年の間色々な情報が流れてきた。
(一時期キーボードコミュニティの多くの人が Twitter のアイコンを美少女アイコンに変えるというのも流行ってカオスで面白かった。
⇒と下書きしてたが、つい最近はお嬢様口調になるのに夢中でこれもまたカオスだった)

界隈にいると感覚がほんのちょっとズレるのかもしれないが
一般的な製品は居酒屋で話しのネタに何人もの鞄から机の上に出てきたりしないし、 DJ プレイや楽器として演奏道具にしたり、部屋の照明の ON/OFF スイッチに使ったり、 エモい写真を撮るために苔むした石段や木の上に置いたり、旅行の際に記念撮影( 旅するキーボード )したりもしない。
ましてや雪が積もったからと言って(濡れないようにビニール袋などに入れて細心の注意を払った上で)雪に突き刺して写真を撮ったりもしないのだ。

一体何がどうしてこうなった...?

単純な消費ではない世界

今までキーボードと言えば、 PC を買う時にオマケで付いてたり、 1000 円そこらで追加出来るもので、仕事や趣味でこだわりのある人が高級なキーボードを買うといった具合であった。

アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。
馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。
いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない。
東京大学 和田英一 名誉教授の談話]
Happy Hacking Keyboard | 和田先生関連ページ | PFU

上記は有名な HHKB の和田先生の談話を引用させていただいたのだが、仕事でキーボードを多用する自分もご多分に漏れず、仕事用と家で使う用の HHKB を買い
「この配列しか打てなくなってもいい。この配列に身体を最適化するのだ」
とまで思ったものだ。

...で、そんなカウボーイ達の現在はと言うと、鞍を自分達で作り始めたかと思うと、
ついには居酒屋で鞍を並べて語り始めたではないか。
並べられた鞍はシックなものからデコデコで派手なもの、あまつさえ光る。
おいおいおい、治安、治安。

さておき、世の中は大企業が大量の広告を使い大衆に売り込む時代から、 工夫や試行、知識次第では自分達で作ることが可能な時代になりつつある。 ただ、「キーボード」はそうした作ることが出来る物の中でも、凄く特殊な位置にあるのではないか。

  • 人間が社会の中でコミュニケーションを取る上で重要な 言葉とも関係が深い
  • 趣味や生活での利用は勿論のこと、様々な仕事でも 効率を上げる ために使うことが出来る
  • 扱う範囲はハードウェアからソフトウェアまで 幅広い領域 に掛かる
  • キーキャップ等の自由度の高い周辺要素があるため、何かしらの 技術を生かす余地 がある
  • 好みや使用感など、正解は各個人の中に存在

短くまとめると
コミュニケーションに関係し、様々な仕事や知識と接点があり、使うと役立つ上に、色々な技術を活かせる懐の深さがある。
といった具合か。 そんな訳でキーボードは、作れるようになった物の中でもやべぇ部類なのでは、と思っている。

長々打ってみたが、ご存知の様にキーボードは人間とコンピューターを繋ぐ道具で、キーボードをいじる時には
「コンピューター寄りの側面」「人間寄りの側面」 があり、そのバランスの取り方も個人に委ねられる。
その辺りをもう少しだけ書く。

キーボード界隈(コミュニティ?)とキーボードの繋がり

キーボード界隈が今の様に広がる上でコミュニティの存在は大きい。

こだわる部分ごとに中心的な人達がいたりするので、その人達を探して Twitter でフォローしてやり取りしてみるのも良いし、
キーボード界隈の色々な人を片っ端からフォローして様々なキーボード情報を取り入れるのも楽しい。
自作だけでなく、カスタムだったり配列などソフトウェア寄りもフォローすると新しい発見になるだろう。 勿論自分で新しい何かを思いついた時には道を切り開いてみるなんてことも出来る。
上記でも少し書いたが、キーボードにはまだまだ何かを取り入れる余地がある。
この点がコミュニティの発展にも大きな影響を及ぼしていると思う。

キーボードはパソコンの周辺機器なので、基本的に入り口としては電子工作なのだが、時に色々な仕事の知識やスキルを持った人達がキーボードを作るついでに(?)電子工作以外の新しい技法や要素を持ち込むことがある。
中には最初に見た時に「なぜそれを...」と驚くものもあるのだが、実物を見たり触ったりすると不思議と「これは良いな」とか「アリかもしれない」に落ち着く。
これはキーボードの人間寄りの部分(見た目の綺麗さや、触った時の感触)がそうさせているのかもしれない。

この人間寄りの部分がなかなかに曲者で、スイッチやキーキャップの新商品が出ては押し心地が気になったり、自分のキーボードに合うか、コレクションとして欲しい、とキリが無い。
これらは単なる好みの問題として放っておくことも出来るが、日常で触れる機会が多いほど、効率や気分にも跳ね返ったりするので尚のことクセが強い。

あと、規模の大きな展示系イベントも有志達によってゆるく行われているのもありがたい。
初対面ではあまり話せないような人もイベントに来て並んでいるキーボードを打ってみるだけで沢山の発見を得ることが出来るハズだ。
展示している人それぞれの好きなスイッチが一堂に介するので、参加の際には見るだけでなく押し忘れることが無いようにしたい。
後からイベントの写真や他の人の感想を見て、触ってなかったことを後悔することも多々ある。。。

ともあれ、キーボードのカスタムや自作を行う上で多くの人と意見を交換したり、わいわいと色々なキーボードを打ってみるのは楽しめると思うので、キーボードを始めたばかりの人や、作るかどうか迷っている人はコミュニティの方にも顔を出してみてはどうだろうか。

まとまらない

ネットワークが広がったことで、仕事や日常の会話もオンライン上で行うことが増えた。
どちらかと言えば割合としてオンラインの方が多い、といった人も結構いるのではないだろうか(ゲーム等も含む)。
そうした社会の中で仕事で使ったり、言葉を打つことと関係の深いキーボードは、カスタムしたり自作出来る身近な道具でありながら、
ソフトウェア方面としても、ハードウェア方面としても使う人本人を表現する何かになりつつある気がしている。

当然ながら
コンピューターに信号が渡った先はゼロとイチの世界で
そこに何か特別な情報が乗ることはない。

だからこそ、なのかは分からないが、大量生産で市場に出回っているキーボードよりもほんの少しだけ。
自分でカスタムしたり半田付けした部分や、作ったケーブル、手を入れたファームウェアの分だけ。
コンピューターに信号が渡るギリギリの瞬間までは、何か特別な気持ちは乗せられる気がする。

そしてそんなコミュニティの中で出会った人達と日々 Twitter や Discord で話す際、
画面のずっと向こうには見たり触ったことのあるキーボードが繋がっていて、自分の手元にも自分だけのキーボードが繋がっているのだ。

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この記事の全文はいつも通り 30 個のスイッチから生まれた。
洒落たシェイクスピアの欠片にもならない乱文だが、無限の猿によって偶然書かれるよりも先にこの世に出しておく。

ja.wikipedia.org